副業・兼業をする従業員の労働時間は通算され、割増賃金はどちらの会社が払いますか?通算で法定労働時間を超えた部分のうち自社で働かせた時間について、各使用者が支払います
副業・兼業をする従業員の労働時間は、通算されますか?
労働時間規制が適用される働き方どうしであれば、通算されます。根拠は労働基準法第38条第1項で、事業主を異にする場合も、労働時間に関する規定の適用では通算すると定められています。ホフィットラボが2026年10月20日に、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の副業・兼業のページで確認しました。
同ページには、副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定、令和2年9月改定、令和4年7月改定)が示されています。ガイドラインは、「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合に、労働時間が通算されるとしています。
法定労働時間と、時間外労働の上限規制である単月100時間未満・複数月平均80時間以内は、通算して適用されます。上限規制は、労働基準法第36条第6項第2号・第3号に定められています。
割増賃金は、どちらの会社が払いますか?
通算で時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について、各使用者が払います。労働基準法第37条第1項の割増賃金です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のページに、通算により時間外労働となる部分のうち「自社で労働させた時間」が支払いの対象だと書かれています。
たとえば、A社とB社で働く労働者がいる場合、A社はA社で働かせた時間のうち法定労働時間を超える部分に、B社はB社で働かせた時間のうち法定労働時間を超える部分に、割増賃金を支払います。A社がB社で働いた時間分を払うことはありません。
労働時間は、どの順番で通算しますか?
所定労働時間は契約の先後の順に、所定外労働時間は実際に所定外労働が行われた順に通算します。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のページに、原則的な通算の手順として書かれています。
- 所定労働時間は、先に結んだ労働契約から順に足し、通算で法定労働時間を超える部分を確認します。
- 所定外労働時間は、実際に所定外労働が行われた順に足し、通算で法定労働時間を超える部分を確認します。
- 通算で法定労働時間を超えた部分のうち、自社で労働させた時間が、自社の割増賃金の対象になります。
通算の計算には、自社の労働時間と、労働者の申告などで把握した他の使用者の事業場での労働時間の、両方が必要です。
36協定は、副業・兼業ではどのように関わりますか?
通算した結果の法定時間外労働のうち、自社分について、自社の36協定の締結と届出が必要です。労働基準法第36条に基づく手続きです。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のページに、自社分の時間外労働は36協定の範囲内で行うと書かれています。
あわせて、時間外労働と休日労働の合計を、単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収める必要があります。この上限は、事業場ごとではなく、通算した労働時間で判断されます。
管理モデルとは何ですか?
通算管理を簡便にする方法で、先に契約した使用者Aと、後に契約した使用者Bが、あらかじめ労働時間の上限を決めて管理します。根拠は令和2年9月1日付けの基発0901第3号です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のページに、手順が書かれています。
- 手順1として、使用者Aの法定外労働時間と使用者Bの労働時間の合計を、単月100時間未満、複数月平均80時間以内の範囲で決めます。
- 手順2として、その合計の範囲内で、かつ各事業場の36協定の範囲内で、使用者Aと使用者Bのそれぞれの労働時間の上限を決めます。
- 使用者Aは、自社の法定外労働時間について、割増賃金を支払います。
- 使用者Bは、使用者Aでの実際の労働時間にかかわらず、自社での労働時間全体を法定外労働時間として、割増賃金を支払います。
導入は、先に契約した使用者Aが、使用者Bに提案します。使用者Aから使用者Bへ直接連絡する必要はなく、労働者を通じた提案もできます。都道府県労働局が示す「管理モデル導入(通知)様式例」を使います。
通算されない副業・兼業はありますか?
あります。事業主、委任、請負など、労働時間規制が適用されない場合は、その時間は通算されません。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のページに、ガイドラインの記述として書かれています。
契約の名称は、労働契約かどうかの判断を決めません。同ページには、労働契約であるか否かは実態に基づいて判断されると書かれています。請負・委託・準委任で行う副業・兼業は、実態によって通算の対象になる場合があります。
副業・兼業をする従業員の健康確保では、何をしますか?
副業・兼業の有無にかかわらず、労働安全衛生法に基づく健康診断、長時間労働者への面接指導、ストレスチェックと、その事後措置を実施します。ストレスチェックは第66条の10、事後措置は第66条の4・第66条の5・第66条の10が根拠です。
- 健康確保措置の対象者を選ぶときに、副業先の労働時間を通算することは求められていません。
- 使用者の指示で副業・兼業を始めさせた場合は、副業先と労働の状況を情報交換し、難しいときは労働者の申告で把握します。そのうえで、自社の労働時間と通算した時間に基づいて、健康確保措置を実施することが適当とされています。
- 事後措置として、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少を、必要に応じて講じます。
- 副業・兼業に係る相談や自己申告をしたことを理由に、不利益な取扱いをすることはできません。
同ページには、厚生労働省が無料で提供する「マルチジョブ健康管理ツール」の活用が示されています。
2026年10月20日時点で、通算の見直しは決まっていますか?
決まっていません。厚生労働省の第205回労働条件分科会(2025年11月18日開催)の議事録に、副業・兼業に関する決定事項はないと記載されています。ホフィットラボは、同議事録のページで確認しました。
同分科会では、割増賃金の支払いに係る労働時間の通算の在り方と、副業・兼業を行う労働者の健康管理が論点として示されました。使用者側の委員からは、割増賃金を通算管理の適用外とする方向の検討を求める意見が出ています。労働者側の委員からは、割増賃金の通算を堅持すべきだとする意見が出ています。
2026年10月20日時点で、ホフィットラボが公式ページで確認できた見直しの状況は、この議論の段階までです。現行のガイドラインに沿った通算管理と割増賃金の支払いが、引き続き基本になります。
事業主は、2026年10月20日時点で何を確認すればよいですか?
副業・兼業の届出内容、他の使用者の労働時間の把握方法、自社の36協定の3点です。
- 従業員の届出で、他の使用者の事業内容・業務内容、契約の締結日・期間、所定労働日・時間、所定外労働の有無を確認します。
- 通算した労働時間のうち、自社で法定労働時間を超えて働かせた時間に、割増賃金を支払っているかを確認します。
- 自社の36協定を確認し、時間外と休日労働の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収まっているかを、通算した時間で確認します。
- 管理モデルを使う場合は、使用者間で決めた労働時間の上限の範囲内で働かせているかを確認します。
確認の頻度は、36協定の切り替え時期に合わせるなど、定期的に行うことが考えられると、同ページに書かれています。
本記事で確認した内容と確認日
ホフィットラボは2026年10月20日に、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の副業・兼業と労働条件のページと、労働政策審議会労働条件分科会(第205回)の議事録を確認しました。
確認した内容は、労働時間の通算の根拠と適用範囲、割増賃金の支払者、通算の順序、36協定と上限規制、管理モデルの手順、通算されない場合、健康確保措置、通算の見直しの議論の状況です。個別の事案は、管轄の労働基準監督署または都道府県労働局に確認してください。
出典(いずれも公式サイト・公式資料)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」副業・兼業と労働条件 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_fukugyoutokengyou.html
- 厚生労働省「2025年11月18日 第205回労働政策審議会労働条件分科会 議事録」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68076.html
